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新生児の授乳回数や時間は?ミルクの足し方は?

病院を退院して赤ちゃんとの生活が始まった時、「授乳の回数や時間、ミルクの足し方が分らない」というのが一番のお困りごとです。

病院では「3時間おきに母乳をあげてその後にミルクを足しましょう」と指導をされることが多いのですが、実際の赤ちゃんの様子に、授乳回数や授乳時間が定まらず、母乳のあとのミルクの足し方もよく分らずに、思考錯誤の日々を送っておられる方はとても多いです。

そこで今回は、退院後から1か月健診までの授乳についてお話をしていきます。

目次

1. 入院中の授乳について

自然な授乳は、出産直後から始まります。赤ちゃんは、出生直後から最初の24時間は比較的起きていて、ママのおっぱいを探し、こちらの新しい世界に適応しようと頑張ります。その後、時間が経過して徐々に身体が適応してくると、少し眠るようになります。

2~3日目になると、赤ちゃんの身体の水分が抜け少し体重が減ります。これを生理的体重減少と言います(出生体重のおおよそ7%~10%以内の減少が適切)。

胃袋に入っていた羊水もほとんどなくなり、赤ちゃんたちは本格的に泣き始めます。この時期、母乳はまだわずかしか出ていない事も多いのですが、赤ちゃんが何度も何度もおっぱいを頻回に吸ってくれることで、母乳生産のスイッチは入り始めるのです。

授乳の回数は、想像していたより頻回で、1日10回以上というのも珍しくありません。不規則に、1日中授乳しているような感覚です。

しかし、病院で出産される場合、この自然な授乳のリズムとは少し違っていることも多いです。多くの病院では、出産の当日や翌日から3時間おきにミルクの補足が始まり、ママと赤ちゃんの体調が問題なければ、産後1日目から授乳が始まります。

「まずは、おっぱいを左右5分ずつを2回(あるいは左右10分ずつを1回)含ませてみて、その後に、赤ちゃんの日齢(出生後日数)×10cc(あるいは、日齢+1×10cc)のミルクを足しましょう」

と指導をされることが多いです。

この方法は、入院中の平均的な赤ちゃんに、(まだ母乳が十分飲めないことを前提として)これくらいの栄養を与えれば足りるだろうという点と、授乳リズムが分かりやすくて管理もしやすいので、多くの病院で取り入れられています。

しかし、最初からミルクを定期的に足すので、赤ちゃんの生理的体重減少はわずかで、入院中の赤ちゃんは、どちらかというとおとなしく寝がちで、おっぱいをしっかり吸わないことも少なくありません。そのため、3~4日頃になると、急におっぱいの張りが強くなってしまうこともあります。

出産後のママの身体の回復状況、赤ちゃんの状況、授乳の状況、出産した病院の方針はそれぞれ違います。入院中の授乳は、その時に、担当した助産師の判断で、さまざまなアドバイスがされているのが現状です。

2.退院後の授乳について

退院後に「自宅に戻った時、実際にどれくらい授乳をして、どれくらいミルクを足せばいいのか分からない」という質問をよく受けます。

「退院後は、赤ちゃんが泣いたらその都度におっぱいを吸わせましょう。ミルクは、生後10日目までは日齢×10ccを与えて、それ以降はミルクの量はそのまま変えずに3時間おきに足しましょう」と説明をされたという話もよく聞きます。

だけど、いざ赤ちゃんとの生活を始めてみると、この方法が本当にあっているのかどうか、いつまでこの方法でいいのか、不安に感じる方も少なくありません。

「母乳をどれだけ飲んだか分らない」

「ミルクは飲むけど、おっぱいを嫌がる」

「ミルクを足しても、なかなか寝てくれなくなった。ミルクが足りなくなってきた気がする」

「あまりにも泣くから、その都度にミルクを足してしまっているが、足しすぎて肥満になるんじゃないかと心配」などなど。。。

たくさんの疑問と不安がわき上がってきます。

そもそも赤ちゃんは、それぞれに生まれてきた週数も体重も性別も、おっぱいの飲み方も、その時に赤ちゃんが持っているエネルギーも違います。本来の授乳回数や授乳時間に決められた数字はありませんし、赤ちゃんの成長に合わせ、授乳のリズムもミルクの飲む量も変化してきます。では、実際どうやっていけば良いのでしょう。

①授乳のタイミング

眠っていた赤ちゃんがモゾモゾと動きだし、口をパクパクしたり、舌を出して何かを探すようなそぶりをしたり、柔らかい声を出し始めたら授乳のタイミングです。

そんな時は、赤ちゃんをそっと抱き上げて授乳をしてみましょう。

最初は、ママの乳首をなめたり、乳首を口にいれてもすぐに外したり、上手く吸ってくれないように感じますが、あせらず、赤ちゃんがママのおっぱいに触れて観察したり、馴染む時間を作ってあげましょう。そのうちに、口を大きく開けるようになって吸い付くようになります。そのまま眠ってしまうこともありますが、このような動作を何度も繰り返すことで、授乳のタイミングをつかんでいくのです。

また、ママのおっぱいが張ってきて、「赤ちゃんに飲んでもらいたいなあ」と感じた時も、授乳のタイミングです。

特に夜間は、授乳のゴールデンタイムです。夜間の授乳は、プロラクチンという母乳を作るホルモンの分泌を促します。この時期の赤ちゃんは、昼間より夜中の方が起きている赤ちゃんも多いです。おっぱいの張りを我慢しすぎると、ますます張りが強くなり、乳輪や乳頭が固くなりすぎて、赤ちゃんが吸い付きにくい状態になったり、長時間の母乳のうっ滞は、乳腺炎の原因にもなります。
おっぱいの張りを感じて目が覚めた時は、できるだけ赤ちゃんに吸ってもらいましょう。

②1回の授乳時間

最近は、授乳アプリにタイマーがついているので、それを使っている方も多いようですが、1回の授乳時間に決まりはありません。

赤ちゃんがおっぱいに吸い付いて、リズミカルに動いていたお口が、だんだんと止まってきたり、自分からはずしたら片方は終わり。反対側のおっぱいを含ませます。それが5分だったり、10分だったり、それ以上だったり、逆に、2~3分ですぐ終わったり・・・。時には、片方だけで寝てしまうこともあります。

赤ちゃんが母乳を飲める量は、おっぱいに吸い付いた時間の長さで決まるわけではありません。母乳の分泌量は、一日の中でも変動し、同じ時間吸っていても、母乳が良く出る時とあまり出ない時があります。

ただ最初は、授乳時間の見当がつかないのも逆に難しいと感じる方も多いです。

そのような場合は「1回の授乳が20~30分程度」ということをおおよそのイメージにすると良いでしょう。片側を何分ずつと均等に決める必要はありませんが、ずっと決まった片方だけを吸わせていると、左右差が出てくることもありますので「今回は右がメイン」「今回は左がメイン」などのように、全体の授乳を通して、できるだけ左右どちらも吸わせていきましょう。
また、授乳に慣れないうちは、長時間を吸わせ続けると、乳首が強く痛むこともあります。授乳の時の乳頭痛の強さの程度も考慮しながら、授乳時間を調整してみましょう。

実際の授乳時間は、その時の赤ちゃんの様子、乳首の痛みやママの体調、生活の事情などのいろいろな理由で変わってくるのです。授乳を続けていくためにも、無理しすぎない程度の時間で良いのです。

③授乳回数

この時期の授乳回数は頻回です。通常1日におおよそ7回~10数回で、中にはそれ以上という方も少なくありません。

授乳間隔も一定ではなく、ある時間帯は1時間おきだったり、赤ちゃんが眠って3~4時間くらい空いたりです。

新生児期といわれるこの1ヶ月間は、「母乳の種まき」の期間です。

母乳が出ている、出ていないにかかわらず、ちょこちょこと授乳をすることで、1ヶ月健診を過ぎる頃から、母乳の生産量が本格的に上がってくるのです。

母乳は、「前乳」 「中乳」 「後乳」と言って、最初に出てくる母乳と後から出てくる母乳では成分が違います。最初に出てくる前乳は、乳脂肪が少なく低カロリー、授乳の後半に出てくる後乳は、乳脂肪も多く高カロリー、赤ちゃんの脳の成長を助けてくれる成分がたくさん含まれています。後乳を飲んでもらうためには、赤ちゃんのペースに合わせ、ゆっくりと授乳をした方が良いのです。
また、後乳は、授乳回数が多い方が、よりたくさん出てくると言われています。赤ちゃんが頻回に起きて母乳を飲むということには、実はちゃんと意味があるのです。

しかし、ずっと1日中頻回に授乳するというのは、ママには心身ともにとても大変な作業です。疲労が強い時や、乳首の痛みが強いときは、オキシトシンという母乳を出すための大切なホルモンが出にくいため、頻回授乳が効果的でないこともあります。

授乳を続けていく場合には、ママ自身の適度な休息はとても大切です。そんなときは、ミルクをうまく活用しながら休息すると良いでしょう。

④ミルクが必要と感じるとき

病院でミルクをたっぷり飲んでいた赤ちゃんは、退院後1週間程度は、比較的おとなしく、よく眠ってくれていることも多いです。しかし、生後2~3週間頃になると、頻回に起きて力強く泣くようになります。

すやすやと眠っていた印象の赤ちゃんが本格的に泣き始め、
「抱っこしていないと寝てくれない」
「下ろすと泣く」
「おっぱいを外すとすぐ泣く」
「ミルクを足してもすぐ泣いてもっと欲しがる」
そう感じる事も多くなります。

なかなか寝てくれない赤ちゃんを見ていると、母乳やミルクが足りていない気がして、悲しくなったり不安になって、少しずつミルクを足す量が増えていくと、今度はミルクをグビグビ飲み始め、赤ちゃんの体重が大幅に増えてしまって、又それも心配したりします。

このような状況は、実際の育児の中でよくあることですが、あまり心配はいりません。どれも赤ちゃんがちゃんと成長している場合がほとんどです。

逆に、生後2週間程度を過ぎても泣くことが少なく、長時間寝ている赤ちゃん(特に小柄な赤ちゃんで、起こさないといつまでも寝ている印象がする場合など)は、時々体重があまり増えていないことがあるので、少し注意が必要です。

そのような場合には、むしろ3時間程度をめやすに赤ちゃんを起こしてあげて、授乳をしたりミルクをあげてみてください。

最初は眠りがちだった赤ちゃんも、徐々に体重が増えてくると、次第に自分から起きるようになります。少し早めに生まれた赤ちゃんや、体重が小柄な赤ちゃんの場合は、こまめに飲ませてまずは体重を増やしてあげることも大切です。

⑤実際のミルクの足し方

多くのママが、ミルクを何回どれだけ足したらよいか迷った経験があります。退院後もずっと、入院中と同じように、3時間おきにミルクを足している方も少なくありません。ミルクの足し方にも定まった形はなく、3時間おきに足すのも決して間違いではないのですが、やはり哺乳瓶で飲む回数が多いと、どうしてもママのおっぱいをなかなかしっかり吸ってもらえないような事は時々あります。

赤ちゃんはそれぞれ、飲み方も体重の増え方も個性があります。赤ちゃんの胃袋にあった適切なミルクの量というのは、実際に赤ちゃんに飲ませてみて、その様子をみながら決めていくのです。ミルクの足す量は、赤ちゃんが育つために必要な量ですが、赤ちゃん自身が無理なく飲めて、ミルクを飲んですこし落ちついてくれる量ですから、その時々で違っています。

ミルクを足す時、以下の目安を参考にしてください。

①生後1ヶ月間の適切な赤ちゃんの体重の増え方は、おおよそ1日20g~30g。

※おおよそ3日間で100g程度、あるいは、1週間で200g程度増えていればOK。

※体重の増え方が大きい場合は、1日に足すミルクの総量を少し減らしてみても良いでしょう。

※増え方が少ない場合には、授乳回数を増やすか、ミルクの1回量を増やしてみて、その後の体重の増え方を確認しましょう。

※赤ちゃんの体重は、毎日正確に計る必要はなく、大人の体重計で、赤ちゃんを抱っこして大雑把に確認できれば大丈夫です。

②赤ちゃんの飲んでいる母乳やミルクが足りている場合、赤ちゃんのおしっこの回数は、授乳やミルクを飲む回数かそれ以上(1日に6回以上)あります。

※おしっこの回数が少ない場合は、授乳の回数を増やしたり、ミルクの量を増やしてみましょう。

③元気な赤ちゃんは、手足をよく動かしたり、力強く泣くことができます。

※あまり泣かず、1日中寝ていると感じる場合には、おしっこがちゃんと出ているか、体重の増え方は大丈夫かを確認しましょう。

④ミルクの足し方の例

例えば、ミルクを1日に400ccのミルクを足す場合、
50cc×8回=400cc でも、
80cc×5回=400ccでも、
100cc×4回=400cc でも、
あるいはその都度に、足すミルクの量が違っていても、結果的に足す総量が1日400ccであれば同じです。
授乳で飲める母乳の量は、その都度に変わりますから、その都度にミルクの量も変わるというのが、むしろ自然なのです。

また、赤ちゃんが飲むミルクの量もその日によって変わります。1回の飲む量にこだわらず、赤ちゃんのおしっこの出具合、ご機嫌や活気、1週間程度の体重の増え具合を見ながら、ミルクを足す回数や量を調整すると良いでしょう。

3.まとめ

生後1ヶ月間の授乳生活は、想像していた以上に大変だと感じるかもしません。
その中で、ママの身体から湧き出る母乳には、様々な感染症から赤ちゃんを守ってくれる生きた免疫細胞をはじめ、赤ちゃんの成長を促すための物質がたくさん入っています。母乳の味や成分は赤ちゃんの成長とともに変化し、ミルクの消化吸収も助けてくれます。
どうぞ、たとえわずかな量の母乳であっても、その1滴1滴を大切に赤ちゃんに飲ませてあげてください。

授乳が上手くいかない時、おっぱいの調子が悪い時、これでいいのか不安な時、ミルクの足した方が分らない時、日々の生活の中で何気ないお困り事がある時、お気軽に当院にご相談ください。

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